Setouchi Vélo

活動レポート[ACTIVITY REPORT]

MEETING&TRIALRIDE
#活動レポート#香川県

Setouchi Vélo協議会 香川県綾川町ミーティング

2024.10.17

讃岐うどん発祥の地 香川県・綾川町。
「健康と教育」をキーワードに、世代を超えた地域住民による自転車活用でまちの課題解決と観光促進へ踏み出す。

令和6年10月3日(木)、『Setouchi Vélo協議会香川県綾川町ミーティング』を開催した。Setouchi Vélo協議会の構成・参加団体、サイクルメディア、有識者、地元行政、商工会関係者など50名ほどが参加。第2期会長を務めた香川県内でのミーティングは初の開催である。

雨天によりトライアルライドは中止 バスでの視察となった

綾川町は香川県中部に位置する町。讃岐うどん発祥の地として知られ、のどかな田園地帯が広がっている。近年では人気ゲームの『ポケットモンスター』のキャラクター『ヤドン』をメインモチーフとした遊具が置かれた『ひだまり公園 あやがわ(通称:ヤドン公園)』をはじめ、綾川町の名産品を使用したお土産など観光にも力を入れている。

参加者たちはトライアルライドで走行する予定だった行程をバスで視察する。まず訪れたのは綾川町と坂出市にまたがる府中湖。サイクリングロードが配備されているものの市町境で途切れてしまっており、自転車で湖を一周することはできない状態にある。島や湖などを一周することはサイクリングにおいてメジャーな楽しみ方のひとつ。このサイクリングロードが自転車観光に活用されるよう整備されることを期待したい。

バスは県道184号線を進み、しだいに湖畔から離れていく。本来ならば黄金色の田園風景やサイクリングロードに配された橋など美しい景色のなかを走行する予定であった。休憩ポイントである道の駅滝宮で振舞われた讃岐うどんや地域の特産物、お土産はどれも美味で参加者たちの舌と腹は満たされたようで、会話も弾んでいた。一緒にライドをしていればもっとはやく打ち解けていたことだろう。ヤドン公園で記念撮影を行い、一行は綾川町総合運動公園へと戻った。

道の駅滝宮で讃岐うどんが振舞われた。
お土産の種類が豊富。特に地元産のイチゴを使用したアイスが美味だった。

対談『日本におけるEバイクの活用』

ミーティングの会場、綾川町総合運動公園の体育館に戻ると、ミーティングまでの時間を使い自転車雑誌2誌の編集長による対談を行った。テーマは『日本におけるEバイクの活用』。登壇したのはサイクルスポーツ誌の中島丈博氏とバイシクルクラブ誌の山口博久氏。進行を務めたのは門田基志氏(株式会社コイデル代表取締役社長)だ。

Eバイクの日本においての問題点、これからどのように活用していくのかということについて話し合った。

山口氏は、会場までの駅で多くの自転車を見た。そして、その多くは高校生や通勤の方であり、年齢を重ねていくと自転車に乗ることが難しくなってくる。そういったときにEバイクを活用することでモビリティの考え方が変わってくるのではないか、と述べた。

中島氏はEバイクの問題点について、その認知度の低さや、違法な電動アシストバイクとの違いが世間に知られていないことを挙げ、自治体が観光目的などで採用する際に合法なものであることをしっかりと知り、選ぶ必要がある、と述べた。

これからのEバイクの活用について中島氏は、「我々のお客さん(自転車乗り)というのは、スポーツバイクに乗り慣れた人達です。そういう人たちは自分たちで目的地を見つけたり、ルートを引いたりということができている人たちなんですね。ただこれから観光活用とか、自転車が趣味でない人達にも使ってもらおうと思った時には、ルートを引くとか、どこが安全に走れるのかみたいなことを調べられない人たちがターゲットになってくると思います。その人たちの不安を取り除けたら活用がより進むし、Eバイクだっていうことを意識させないで、徒歩ではいけない距離だが車で行くには近すぎるところを楽に移動できる便利なツールとして広がっていくことに可能性があるのではないかなと思っています」と話した。

綾川町のこれまでの自転車の取り組みとこれから

ミーティングはまず、綾川町長前田武俊氏の挨拶から始まる。

綾川町は香川県の中央に位置しており、讃岐うどん発祥の地として知られている。名産品にはいちごや柿があり、米どころとして知られる同町には酒蔵もある。自転車においては、自然豊かな土地であることを活用し、1990年からロードレースを17、8年に渡り開催しており、今年9月にも「COPPA AYAGAWA 2024」というロードレースが開催された。自転車への想いは脈々と続いており、今後は観光、健康などを踏まえ自転車を活用した町おこしを行い、活性化につなげていきたい、という想いを語った。

続いて事務局の森田真弘(本四高速取締役常務執行役員)の挨拶。市町村ミーティングは今回で6回目を迎え、香川県では初開催であることや、サイクリストのサポートを行う店舗施設『Setouchi Véloスポット』などの事務局の活動の紹介、11月8日に広島県尾道市で行われた年次総会の告知を行った。

次に行われた開催地発表では綾川町総務課いいまち推進室主査坂井大介氏が登壇し、綾川町の自転車活用促進について発表された。そのなかで綾川町は交通の利便性はよいのだが、問題点として観光施設が少ないこと、それらのスポットが離れていることが挙げられた。車での移動が中心になってしまう現状を、自転車を活用することで変えていきたい、とのことであった。

また、高齢化の問題についても自転車の活用により、健康づくりを推進していきたいとのことだった。こども園での交通安全教室も行われており、今後Eバイクの活用だけでなく町全体で自転車を盛り上げて、香川県での自転車活用先進エリアを目指していくとのことだった。観光、地域住民の自転車の活用が進んでいくことで、町の在り方が少しずつ変化していくことだろう。

続いて、門田基志氏による基調講演では『世代を超えた自転車活用について「安全と健康」』というテーマで、過去に愛媛県で門田氏が行った高齢者に向けたスポーツサイクリングの様子が紹介された。体力がなくスポーツ自転車に乗ったことのない高齢者であってもEバイクを活用することによって、生きがいを見つけることができるというもの。しかし、そのためには交通ルールや、ヘルメットの着用方法など安全についての知識がとても重要であるという内容であった。高齢者の活発な活動が可能になるということ、それは地域の活性化につながっていく。日本全体で今後ニーズが高まっていくことだろう。

サイクリストの安全の要となるのがヘルメットである。続いては株式会社オージーケーカブト広報チーム小川裕輔氏による『ヘルメットが守る命』というテーマでの安全講話を行い、ヘルメットの構造や、衝撃を受けたときに頭がどのようにヘルメットに守られているのかということを実験のデータを基に語られた。

雑誌編集長が考えるこれからの綾川町の取り組み

ミーティングの最後に行ったのが、『綾川町の課題を自転車活用で解決するヒントを探る』というテーマで行われたパネルディスカッションである。門田氏、自転車雑誌編集長の中島氏、山口氏、綾川町長前田氏、綾川町総務課いいまち推進室長福家氏が登壇し意見が交わされた。

綾川町は今後自転車活用を進めていくうえで、課題と捉えているのが「安全な道路環境の整備」と今後開催される万博や芸術祭時の「観光集客の方法」だと言う。
それに対して山口氏は過去にロードレースが行われた綾川町は他都市よりアドバンテージがある。ニュータウンができて若い世代も増えているので、子どもたちに対して学校教育で自転車のことを伝えていくことで、綾川町の自転車環境は大きく変化していくだろう、と話す。

中島氏は愛媛県で行われている『シェアザロード』の活動を例に挙げ、車のドライバーが自転車を認知することが自転車の安全な走行空間をつくる上で大切。車にステッカーが貼ってあることで、自転車が走行していなくてもドライバー同士が自転車の存在を少しずつ認知していくきっかけになる、と述べた。

また、車と自転車が走る道を分けてしまうことも一つの手段だと話す。大通りの裏にある既存の道を自転車走行推奨にするなど、走行する場所を分けることで中高生の通学の安全性は上昇するなど、全国の自転車の安全に対する取り組みを紹介した。

またもう一つの課題である観光集客の方法について、進行の門田氏が台湾から30人のツアーが来て四国一周を行ったことについて触れ、「30人は少ないと思われるかもしれないが、10泊すると延べ300泊になる」そういったインバウンドの受け入れ方法もあるということを話した。

続いて山口氏は綾川町に宿泊施設が少ないことを指摘し、さらにサイクリストはグループでの走行を好む人だけでなく、一人での走行を好む人も一定数いるということを挙げて、民泊などを使ってもらうことでより高付加価値な宿泊を期待することもできると話した。また、自転車で移動しながら作品を見ることができる芸術祭の例を挙げ、作り込まれた芸術祭であれば海外からの集客もできるのではと話した。

中島氏は自転車をそのまま乗せられるサイクルトレインで最寄駅まで来て、うどんの美味しい店を紹介するアプリを連携させて、サイクリストに巡ってもらう観光プラン『うどんweek』を提案。自転車を持っていない観光客にはEバイクのレンタサイクルを用意、綾川町に返却スポットを多く配置することにより綾川町での周遊性を高めるなどさまざまなアイデアが提案された。

自転車は車や電車など乗り物に乗せられる乗り物。さまざまな交通機関との連携をすることにより、可能性を広げることができる。前田氏は「香川県も自転車活用推進を強化することを議会で答弁している。町、市でとは言わず、全体で取り組むかたちにすればいろいろな取り組みができ、幅が広がっていくのだと思う」と述べた。

ミーティング後のインタビューで前田氏はEバイクについて、「僕は70歳を越えているけれど、乗り方をきちんと習えば生活に使うことができると思うし、山間部にお住まいの方でも利用ができると思っている。僕らは行政だから、安全に利用するための環境づくりのことを一番に考える。道路を車両、歩行者、自転車がシェアすることで町民が交通安全を意識するようになっていくと思う。観光については、綾川町にはうどんの有名店がたくさんあるので、Eバイクで回ってもらうプランは海外の方にも十分適用できる。観光地を回るより、食で回ってもらうのがいいと思っている。最後に伝えたいのは、自転車は子どもがいちばん最初に触れる乗り物で、みんなが経験する身近で魅力のある乗り物。それは自分の生活にある自転車もそうだし、先日開催したロードレースのなかにも魅力がある。子どもの頃から安全教育をすることで自転車は今後大きな役割を果たしていくと考えている」と述べた。

綾川町は香川県の中心に位置する町、自転車への取り組みも長年にわたり行ってきている。そして子どもへの自転車の安全教育も進めていくという。今後はこの綾川町が自転車活用の先進エリアとなり、隣接する市町村、ひいては香川県全体のハブになっていくことに期待をしたい。