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海を感じた広島トライアルライドと、さらなる広域連携へ進み続けるSetouchi Vélo 尾道会議【総会】報告
2024.11.22
令和6年11月8日(金)、広島県尾道市でSetouchi Vélo協議会 尾道会議【総会】を開催し、湯﨑英彦広島県知事が新会長に就任した。この総会、ならびに広島県のしみなみエリアで開催されたトライアルライドの模様をレポートする。

船から始まったトライアルライド
Setouchi Vélo協議会 尾道会議【総会】に先立って開催されたトライアルライド。例年、新しい会長県がとっておきのサイクリングコースを紹介するもので、今年は広島県の三原市と尾道市を舞台としたルートが設定された。
昼過ぎにスタート地点の三原港に集まったのは、湯﨑英彦広島県知事をはじめとするSetouchi Vélo協議会の関係者約30名。岡田吉弘三原市長は開会の言葉で、この三原市にも「さざなみ海道」と「広島県立中央森林公園」の2つのコースがSetouchi Véloルートに登録されていることをアピール。

毎回のトライアルライド、そしてSetouchi Vélo協議会において欠かせないものがEバイク。今回もジャイアント製のEバイクが参加人数分用意され、乗り方講習を受けて自転車の操作感を確認。伊原木隆太岡山県知事は、「自転車の乗り方講座なんて小学校の時以来ですね」と笑顔を見せながら最新バイクの感触を楽しんでいた。
今回のコースは、瀬戸内の魅力をサイクリングでより楽しめるよう、船での移動が取り入れられた。渡船に自転車を積む移動はこの地域でこそ珍しくないが、他県・他地域の者にしてみればなんとも新鮮。自転車旅に船旅をプラスできるのは、しまなみ海道ならではと言えるだろう。

今回の船は瀬戸内クルージングが運行する「サイクルシップ ラズリ」。その名の通りサイクリスト向けの旅客船で、通常は尾道〜瀬戸田間を土日祝日に運行しているが、今日はSetouchi Vélo協議会のための特別チャーター便。三原港から佐木島へのおよそ20分の船旅からトライアルライドが始まった。

Eバイクで島の魅力に触れたサイクリング
佐木島の北に位置するさぎ港に着くと、「さぎしまトライアスロン発着点の地」という碑が立っていた。瀬戸内海に浮かぶここ佐木島はトライアスロンの聖地であり、そして今年7月にはプロの自転車ロードレースが開催された場所でもある。そんな好環境でライドがスタート。3班に分かれて島の東側の海岸線を走っていく。


島の南西部に位置する向田港へはおよそ7kmの行程。終盤には上り坂も登場したが、Eバイクでのライドは快適そのもの。登りで疲れず、下り坂では爽快感を味わうことができた。山側には柑橘類の畑が彩り鮮やかで、秋の涼しい気候も相まって絶好のサイクリング日和だ。
しまなみ海道を走り慣れたサイクリストにとっても佐木島は魅力的だ。船で移動することもあり、どこか遠いところへ来たという旅ライドならではのワクワク感を覚えたのだった。

佐木島からは再び「サイクルシップ ラズリ」に乗船し、お隣の因島(尾道市)へ。海上からは、自転車の上からとはまた違った瀬戸内の景観が楽しめる。船長による「左手に見える小佐木島は、最近サウナを求めていらっしゃる方が多くいます」「正面の宿祢島は無人島ですが、新藤兼人監督による映画『裸の島』のロケ地となったところです」といったアナウンスが、旅情を深めてくれる。
しまなみ海道の絶景に見惚れる
因島へ上陸し、再びEバイクにまたがる。この頃には参加者の誰もが自転車に乗り慣れていて、そのライドはスムーズそのもの。路側帯にはブルーライン。ここがしまなみ海道だと教えてくれる。巨大な船舶修理工場に目を丸くしつつ、因島大橋へ。橋までの長い上り坂もスイスイと走ると、ハイライトとなる因島大橋の走行が待っていた。海の上を飛んでいる気分にさせられるこの場所は、しまなみ海道の中でも特徴的なルート。絶景にして壮観。


橋をわたると、そこは本土に一番近いしまなみ海道の島、向島。海沿いに数km走ると、今回のライドのフィニッシュ地点「tsubuta SANK!」が見えてきた。しまなみ海道を訪れる人に大人気のアイスクリーム屋さんで、地元の食材を使ったスイーツに参加者一同舌鼓。体を動かした後だから、より美味しさが染み渡るというもの。


店主の澤野さんはかつて自転車関連の仕事をしていたとあって、ここはサイクルラックや空気入れを完備した自転車乗り歓迎のお店。こうしたお店の存在が、しまなみ海道をよりサイクリングの聖地にするのだと実感した。

湯﨑英彦広島県知事インタビュー
このトライアルライドの開催県広島の長であり、第3期のSetouchi Vélo協議会会長を務める湯﨑英彦広島県知事に、今後の意気込みをうかがった。
―――今日のトライアルライドのコース設定の意図は?
メインテーマは海を感じてもらうということでした。我々のように瀬戸内に住んでいる者からすると船に乗るのは当たり前のことですが、その他の地域の方にとっては必ずしもそうでないと思います。船上の気持ちよさや、橋の雄大さを味わっていただければと。因島大橋は車道の下を走りますが、すごく海が近く感じていただけたのではないでしょうか。

―――今日の総会をもって広島県が会長県になります。その意気込みをお聞かせください。
コロナ禍が終わり海外からのお客様がたくさん来ています。しまなみ海道にはさらなる好機ですし、訪問客の旅の仕方も変わってきていると感じています。有名なものを観ることよりも、どんな体験をして、どんな時間を過ごすか、地域のものとどう触れ合うかがすごくクローズアップされてきていますよね。
サイクリングは歩くよりも距離を動けて、クルマだと見過ごしてしまうものを発見できます。サイクリングで少し遠い場所へ行って、その土地の色んなものを味わっていただけるよう、ここ広島という地域をしっかりアピールしていきたいなと思います。
―――鳥取県や高知県が加わり、Setouchi Vélo協議会には広域連携というニュアンスも強くなっています。広島県にも今日のような海はもちろん、豊かな山間部がありますが、広域での自転車活用という観点として打ち出したい自転車の楽しみ方はありますか。
広島県としては、海でも山でもゆっくり走って楽しんでいただきたいという思いがあります。お店だったり、神社だったり、森だったり、海だったり、色んなところを味わい楽しんでいただきたいですね。
誰でも乗れるEバイクには、坂を気にせずコースを取れるメリットがあります。山間のエリアをルートに入れやすくなりますし、オフロードを走るような新しい遊び方も含めて、様々な方にそれぞれの楽しみ方を提供できるツールだと思います。

Setouchi Vélo協議会 尾道会議【総会】
心地よいトライアルライドを終え、夕方からは尾道市⺠センターむかいしま文化ホールでSetouchi Vélo協議会 尾道会議【総会】を開催した。

第2期会長を務めた池田豊人香川県知事は、「瀬戸内海は、全国でも有数のサイクリングに恵まれた場所だと思います。サイクリングは身体にも、精神にもリフレッシュをもたらし、町のにぎわいづくりにも大きな効果があることがしまなみ海道で実証されています。意義ある取り組みのSetouchi Vélo協議会で、引き続き瀬戸内地域のサイクリングを盛り上げて参りましょう!」と挨拶。


続いて構成団体の代表として(一社)中国経済連合会、芦谷茂会長から「新型コロナの収束以降観光需要は回復してきており、当経連では、来年開催される大阪・関西万博や瀬戸内国際芸術祭といった国際イベント契機として、地方への来訪を促すため様々な取り組みを実施している。その一環として、近年のアドベンチャーツーリズムの盛り上がりに合わせ、クルーズやサイクリングなどにより、多彩な観光資源を活用した島しょ部と中山間地域の活性化にも力を入れている。個人的には、島を自転車で巡るのは初めてであったが、島に暮らしておられる皆さんの日々の生活の様子を垣間見ることができたとともに、風切り音が非常に気持ちよく、自転車でしか味わえない楽しい体験をさせていただくことができた。」とライドの感想を交えた言葉があった。

事務局を務める本州四国連絡高速道路(株)の後藤政郎社長からは第2期のSetouchi Vélo協議会の活動報告を行った。サイクリングルートが26箇所追加され、全108ルートになったことや、このルートのパンフレット作成配布、ホームページの充実による情報発信の強化、各地域でのトライアルライドの開催が報告された。また、構成団体は23団体、参加団体は22団体増加の56団体となり、鳥取県や高知県の参加に代表されるように、瀬戸内エリアにとどまらない拡充も大きなトピックスだ。

そして会長盾が池田豊人香川県知事から湯﨑英彦広島県知事へと引き継がれた。新会長となった湯﨑知事は、「会長職を引き継ぐのは身が引き締まる思いです。Setouchi Vélo協議会は今や山陰から高知県まで、構成・参加団体が79団体と広がりを見せています。Eバイクの普及促進を掲げていますが、本日のトライアルライドで乗り手、そして走る場所を選ばない、いかにユニバーサルな自転車であるかを感じてもらえたと思います。自転車でどこでも行けるようになると滞在も伸び、宿泊も増えますから、サイクルツーリズムの伸長を期待しています。山陰から高知県まで、安全・快適なサイクリングの推進エリアに育てていきたい。」と抱負を述べた。
第3期を迎えエリアの拡大を続けるSetouchi Vélo協議会。自身も自転車が好きだという湯﨑新会長のもとで、さらなる成長と発展が期待される。


総会のあとには、国土交通省 道路局 自転車活用推進本部 事務局 直原史明次⻑より「最近の自転車施策の動向」、株式会社ジャイアントの臼井亮太商品部⻑より「E-BIKEの規制緩和と型式認定について」と題した記念講演がそれぞれ行われ、最新の自転車事情について参加者はみな理解を深めていた。

