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四国4県を巡るトライアルライド [Day1]〜サイクリング環境拡充を目指して〜
2024.04.10
2024年4月10日(水)〜12日(金)の3日間、四国4県をめぐるトライアルライドが行われた。
このライドに参加したのは、Setouchi Vélo協議会とその加盟団体員。これまでに行われた総会や市町村ミーティングにおいて、世界や日本の各地の取り組みなどの“知識”を得てきたが、今回はライドを行うことで“体験”すること、またライド後にディスカッションすることが目的である。各エリアの可能性や課題を確認し、それぞれの今後の取り組みに活かしていこうという試みである。
今回はその1日目の様子をお送りする。
Day1
- Ride1|愛媛・松野町『道の駅虹の森公園まつの』〜高知・四万十町『道の駅四万十とおわ』(走行距離 24km)
- Ride2|高知・いの町『紙の博物館』〜高知・いの町『水辺の駅あいの里』(走行距離 14km)
Day2
- Ride1|高知・夜須町『道の駅やす』〜高知・安芸市『道の駅大山』(走行距離 21.5km)↗
- Ride2|高知・室戸市『道の駅キラメッセ室戸』〜徳島・海陽町『道の駅宍喰温泉』(走行距離 41km)↗
Day3
Day1 Ride1
四国4県を巡るトライアルライドの初日の朝、集合地点である愛媛・松野町『道の駅虹の森公園まつの』には10名ほどの参加者が集まった。春の穏やかな晴天のもと、フィニッシュ地点となる高知・四万十町『道の駅四万十とおわ』へと24kmの行程。参加者たちには自身の体にあったサイズの自転車が用意されており、ヘルメットの着用方法やEバイクの走行時の注意点などが伝えられる。
参加者はそれぞれのエリアで自転車の活用を推進する業務に従事している人たちばかりだが、実際に自転車に乗るとなると、知らないことも多い。トライアルライドに参加することで、基本的な知識を身につけることができるし、実際に走ることで長距離の自転車走行にも慣れることができる。また、走行中に出てきた疑問点について、その場で聞くことができるのは大きなメリットだろう。
『道の駅虹の森公園まつの』をスタートして広見川にかかる橋をわたると、伊予と土佐の交易の中心として栄えた松丸街道に入る。商家や造り酒屋など歴史を感じられる建物が並んでいる。さまざまな走行知識を詰め込まれて不安の色を顔に浮かべていた参加者たちだが、走り出してしまえばその色は消えているようだった。
広見川に沿うように山間に帯する国道381号線の周囲には田植えの時期を迎えた田園の風景や、沈下橋など長く変わらない田舎の人々の暮らしぶりを垣間見ることができる。ほどなくして高知県・四万十市への県境をまたぐ。とはいえ、四万十川へと注ぐ広見川の景色はのんびりとしていてなにも変わることはない。
『道の駅よって西土佐』で休憩する。売店にはあゆの塩焼きなど、地域の特性を活かした商品が販売されていた。長生沈下橋を渡り、四万十川に沿って進む。川平橋からは川の両側に連なる新緑の山々と、遠くまで伸びていく四万十川の美しい景色を見ることができた。トンネルを抜けるとフィニッシュ地点『道の駅四万十とおわ』だ。
オールディスカッション[Day1 Ride1]
走行したコースについて
- 「自転車ビギナーの自分でも、道が整備されていたため走りやすかった。景色もよく、桜が散りゆく中、美しい新芽の緑を見ながら気持ち良く走れた」
- 「基本的に道と川だけなので、他に観光スポットがあればもっと良い」
- 「走り出す前に予備知識があればもっと楽しめたと思う」
- 「県境のところにちょっとしたモニュメントみたいなものがあれば、記念撮影にも使えるし記憶に残ると思う」
- 「『道の駅よって西土佐』で鮎の塩焼きを食べたが、柔らかくて塩加減も良く美味しかった」
- 「初めて四万十のうどんを食べたが、コシがあって太くて手打ち感があり美味しかった」
- 「分かりやすい撮影スポットが欲しい。撮影スポットに行きやすいコース設定をすることで、より多くの人に写真を撮ってもらえ、情報拡散につながると思う」
Day1 Ride2
午後のライドは高知・いの町がそのフィールドとなる。スタート地点は『紙の博物館』で、このコースは昨年行われたSetouchi Véloいの町ミーティングで使用される予定だったものとほぼ同じ。昨年は荒天のため、トライアルライドは中止になってしまったため、今回が初の実走となる。
いの町は和紙の生産地として千年以上の歴史を誇る伝統工芸の町である。“仁淀ブルー”で知られる清流仁淀川から恵みを受け、和紙原料の生産とともに和紙の産地としても発展し、いの町で生産される土佐和紙は日本三大和紙のひとつとされている。フィニッシュ地点の『水辺の駅あいの里』までの14km、参加者たちは仁淀川に沿って伸びる道を進む。
前半は市街地の国道ということもあり、交通量は多い。スタート地点から右折で国道に出る際、信号がないために全員が出ることに時間を要した。集団での走行では走行者が多くなるほど、信号や右折時に集団をコントロールすることが難しくなる。サイクリングを企画する場合には留意したい。
仁淀川を左手に見ながらしばらく走ると、交通量も集落も少なくなっていく。山間部を大きく蛇行する仁淀川、水量が増えても水の逃げ場がないほど両側の山々が切り立っていることがよくわかる。厳しくも美しいその風景のなかには石造りの沈下橋が点在し、人々の営みを知らせてくれる。沈下橋をわたり県道に入ると交通量はほとんどなくなり、少しのクライムパートに入る。
平坦時より速度は落ちるがEバイクの恩恵を得られるため、参加者たちからは会話の声が聞こえる。走ることに一生懸命になりすぎない、だから会話を楽しむことができる。そして、景色を楽しむこともできるのだ。フィニッシュ地点にやってきた参加者たちは笑顔であった。Eバイクはバスに積み込まれて、参加者たちもバスへ。オールディスカッションが始まる。
オールディスカッション[Day1 Ride2]
走行したコースについて
- 「沈下橋を渡ると風景を楽しめる。路面がなだらかなので初心者におすすめ」
- 「大型トラックが多かったが、対岸の道は適度なカーブ、程度な坂道であったため走りやすかった」
- 「展望台や案内板などがあれば、サイクリストのテンションも上がるし、車にもサイクリングコースだと伝わりやすくなので環境がよりよくなると思う」
- 「川を利用したアクティビティをサイクリングにプラスして売り込むと良い」
- 「194号線を整備して自転車道を併設すると、しまなみから人が流れてくると思う。日本海から太平洋まで走れるコースは魅力的なので、ぜひ実現してほしい」
- 「日本海から太平洋まで走れるコースをPRし、宿泊や食事などのストーリーを提案すると良いと思う。そうすると海外からの観光客にも長距離ルートで楽しんでもらえるきっかけになるのではないか」
長距離ライドのエリア連携提案を受けて、自転車専門誌が考える旅
- 「食とサイクリングを組み合わせたイベントを企画すると面白そう。(フランスのガストロノミとサイクリングを組み合わせたイベントみたいなもの)1年に1回くらいそういうイベントがあって、それがツアー化すると面白いし、海外でもアピールしやすいと思う」
- 「ダイニングアウトのように、その場所の歴史や文化を食で体現する特別なディナーを通じて、食事だけでなくその土地の文化をプレゼンテーションし、情報を発信することを目的とするイベントが良い」
1日目のライドを終えて
これからの自転車活用を考えるうえで、とても濃厚な1日だったように思う。各エリアにおいて、自転車活用を推進する人たちにとって、ライド体験から得られる情報、そして自転車有識者との意見交換によって得られる情報というのは、何物にも変え難い価値のあるものだったのではないだろうか。いま、多くの自治体や民間企業が自転車を活用しようと、それぞれのエリアでアイデアを絞りながら自転車によい環境を整えようと進んでいる。
今回Setouchi véloのトライアルライドで初めて行われた、ライド後のオールディスカッションはそれぞれがその道や景色を感じて、それぞれの立場からそのエリアの魅力や改善点、これからについて話し合った。はじめは聞くことに重きをおいていた人たちも、議論を聞くうちに次第に話すようになっていった。自身が感じたことを話す、それに対しての意見が出てくる。エリアは違えど抱えている改善点や問題点はそれほど違わない。だからそれぞれが自分ごととして考えることができ、議論が盛り上がっていくのだろう。
県境をまたいで行われたトライアルライドは県と県をライドでつないだ。オールディスカッションでの議論ではそれぞれの立場の境を越えたようだった。