Setouchi Vélo

活動レポート[ACTIVITY REPORT]

MEETING&TRIALRIDE
#活動レポート#鳥取県

Setouchi Vélo鳥取・岩美町ミーティング

2025.12.16

令和7年10月3日(金)、鳥取県鳥取市と岩美町において市町村ミーティング、『Setouchi Vélo協議会鳥取・岩美町ミーティング』が行われた。

雄大な風景が広がる城原海岸を走り抜ける参加者たち

トライアルライド<鳥取の美しい海岸線と集落>

曇天なれど風が心地よく自転車の走行に最適な気温、鳥取砂丘の傍にある駐車場に参加者たちが集まった。今回トライアルライドに参加するのは30人ほど。鳥取砂丘をスタートし浦富海岸にフィニッシュする全長約16kmのコース。鳥取県がナショナルサイクルルートの指定を目指し、走行環境の整備、受け入れ環境の充実を進める「鳥取うみなみロード」の一部を使用したもの。開催地挨拶から始まり、ヘルメットの正しい着用法、Eバイクの乗り方、ハンドサインの講習が行われた。ライドがスタートするとコースは海沿いの防砂林へ。砂地での生育が最適な鳥取県の名物らっきょうの畑を横目に自転車は進む。

最初のエイド(補給地点)を過ぎると1kmほどの上り区間に入るも、Eバイクのアシスト機能が快適であった。「こんなに楽に走れることは驚き。景色をしっかりと楽しむことができる」と参加者は話す。イカ釣り漁船が並ぶ網代漁港を過ぎると再びの上り。しばらく走るといくつもの巨岩が海中からそびえる雄大な風景、城原海岸(しらわらかいがん)が現れる。海岸線はアップダウンを繰り返すことも少なくないが、Eバイクを利用することで観光の可能性は大きく広がる。

網代漁港、田後港など風情のある漁港にはのんびりとした優しい空気、風情がある。こういった地域の雰囲気に触れることができるのも自転車で走る魅力のひとつだ。フィニッシュ地である浦富海岸に辿り着いた参加者たちは、炭火で焼かれたイカ焼きで腹を満たした。Setouchi Vélo協議会ではこれまでに各地でトライアルライドを行ってきた。海側のルートが設定されることは少なくないが、海と一口に言ってもそれぞれに個性があふれている。その魅力を地域がそれぞれに伝えることがサイクリング環境の広がりにつながっていくのだと感じられた。

トライアルライドの受付が設置されたSANDBOX TOTTORI
開催地挨拶を行う鳥取市経済観光部⻑ 大野正美氏
ヘルメットの被り方講習を行う株式会社オージーケーカブト 柿山昌範氏
自転車の基礎講座を行う株式会社コイデル 代表取締役 門田基志氏
最初のエイドIWADO BASEで地域の補給食(梨サイダー、梨ケーキ)が振る舞われる
地元特産の梨ケーキをいただく
上り区間もEバイクで快適に走行できた
2つ目のエイド浦富海岸遊覧船乗り場ではイカスミソフトクリームをいただく
イカ釣り船が並ぶ網代港を走り抜ける
フィニッシュ地点の浦富海岸でイカ焼きをいただく。エイドでは地域の色が充実していた

ミーティング<鳥取モデルを創る>

開催地・事務局あいさつ

トライアルライド後に行われたミーティングではまず、開催地を代表して岩美町副町⻑田中祥一氏があいさつを行った。鳥取県では、県を東西に横断するサイクリングロード「鳥取うみなみロード」の整備を進めており、その終点は今回のゴール地点となった浦富海岸の先、JR東浜駅に設けられている。東浜駅は豪華寝台列車「TWILIGHT EXPRESS瑞風」の停車駅でもあり、沿線から望む風景も魅力のひとつとして紹介された。

また、アニメ作品のロケ参考地として注目を集めたことから、町内には全国からファンが訪れており、観光客の移動手段としてレンタサイクルの利用が盛んになっていることが報告された。さらに、岩美道路の全線開通により海沿いの道路の交通量が減少し、ポタリングから本格的なサイクリングまで、多様な走行が楽しめる環境が整ってきていることが説明された。

岩美町には開湯1200年の歴史を持つ岩井温泉もあり、サイクリングと観光を組み合わせた多様な体験を提供できる地域として、今後「鳥取うみなみロード」をナショナルサイクルルートに指定されることを目指して取り組みを進めている旨が述べられた。

続いて事務局本四高速取締役常務執⾏役員 森田真弘氏があいさつを行った。協議会は2022年10月に29団体で発足し、環境に配慮した安全で快適なサイクリングを通じて、瀬戸内および周辺地域のブランド価値向上と持続的な地域振興を目指して活動している。発足から3年を経て加盟団体は87団体に拡大し、地域を越えた連携が広がっていることが報告された。

現在は、加盟団体とともに新たなサイクリングルートの調査・整備を進めており、2025年7月には鳥取県倉吉市と岡山県真庭市を結ぶルートで、関係者によるEバイクの実走調査を実施したことが紹介された。今後は新規ルートの設定も視野に、整備を進めていく方針が示された。

また、昨年秋から実施している「シェア・ザ・ロード(思いやりロード)」の啓発活動についても継続実施しており、秋の全国交通安全運動の期間中には、加盟団体の協力のもとポスター掲出やチラシ配布、交通安全イベントでのPR活動を行ったことが報告された。最後に、活動に協力した関係者への謝意が述べられた。

ミーティング開催に際して、あいさつを行う岩美町副町長 田中祥一氏
Setouchi Véloの活動について話す本州四国連絡高速道路株式会社取締役常務執行役員 森田真弘氏
開催地発表<鳥取県におけるサイクルツーリズム推進の現状と今後の展開>

次に行われた開催地発表では、鳥取県サイクルツーリズム振興監 田口邦彦氏がこれまでの鳥取県の取り組み、これからの取り組みについて発表を行った。鳥取県は、サイクルツーリズムの推進に向けて7つの重点項目(環境整備、ナショナルサイクルルート指定、地域ツアー促進、誘客促進、イベント支援、公共交通連携、日常利用推進)を軸に事業を展開してきた。これらを推進するため、令和2年に「鳥取県サイクルツーリズム推進連携会議」を設立し、令和5年には全市町村が参画する体制を確立した。

具体的には、「鳥取うみなみロード」の整備を進め、道路管理者との協力のもとルートとサブルートの検討を実施。令和7年度中の完成を目指している。受け入れ環境では、「ダイジョウブシステム」制度を県全域に拡大し、現在370を超える事業者が登録。カフェや休憩施設を面的に展開することで、利用者の利便性を高めている。

また、ブランド発信にも注力しており、ロゴマーク制定やモニュメント設置を進め、10月にはJR西日本協力のもと境港駅に出発看板を設置。さらに、サイクリングイベント「鳥取すごいライド」に台湾体育運動大学の学生を招くなど、国際交流を通じたインバウンド誘致にも取り組んでいる。

今後は、「自転車と公共交通の連携」を軸に、県独自のモデル構築を進める。その一環として、今年4月に開始した「鳥取うみなみサイクルトレイン」(鳥取〜米子間22駅)を継続し、利用者の増加を目指すとともに、10月からは「鳥取だいせんサイクルバス」を試行運行し、自転車とバスの接続性を検証する。

また、市町村や民間事業者と連携し、日常的な自転車利用の促進、交通安全啓発、道路環境の整備を一体的に進めることで、第二次鳥取県自転車活用推進アクションプログラムの実現を図る方針が示された。

鳥取県サイクルツーリズム振興監 田口邦彦氏が鳥取県の取り組みについて発表を行う
話題提供<国の自転車活用政策の現状と今後の方向性

国土交通省道路局参事官・自転車活用推進本部事務局次長の土田宏道氏より、現行の自転車活用推進政策の概要と、鳥取県における取り組みへの評価、さらに次期(第三次)自転車活用推進計画の方向性について説明があった。

まず、現行の自転車活用推進法(2016年施行)に基づく政府計画について、国は閣議決定による基本計画(現在は第二次計画)を策定し、都道府県および市町村にも地域の実情に応じた計画策定を努力義務として求めていることが紹介された。国としては、地方自治体が独自の課題や目標に即した計画を作成し、政策の一貫性をもって継続できるよう支援していく方針が示された。

また、鳥取県のサイクルツーリズムへの取り組みについて、同県では「サイクルトレイン」と「サイクルバス」の双方が運行されており、これは全国的にも珍しい先進的な事例であるとされた。自転車を分解せずそのまま乗車できる利便性は、サイクリストにとって大きな魅力であり、今後国としても他地域への普及を促進していきたいとの考えが示された。

続いて、策定中の第三次自転車活用推進計画の骨子として、現行の4つの目標を5つに再編する方向が紹介された。新計画では以下の点が重点として挙げられた。

  • 自転車の走行空間の整備強化(矢羽根・専用レーンなどの充実)
  • 安全・安心な社会の実現(青切符制度導入を踏まえた交通ルール遵守の推進)
  • 公共交通との連携・地域モビリティの補完としての自転車の活用
  • 健康増進と脱炭素化への貢献
  • 観光地域づくり・地域活性化につなげるサイクルツーリズムの推進

また、近年の公共交通の担い手不足や地域交通の空白化が進むなかで、自転車を地域移動の一翼として位置づける必要性が強調された。 さらに、第三次計画では「誰もが安全・快適に自転車を活用できる社会の実現」をビジョンとして掲げ、持続可能で活力ある地域づくりを自転車活用を通じて推進していく方向が示された。

国の自転車施策について話す国土交通省道路局参事官・自転車活用推進本部事務局次長 土田氏
パネルディスカッション<サイクルツーリズムを核とした地域振興の方向性と『鳥取モデル』の可能性

コーディネーターの門田基志氏(株式会社コイデル代表)が進行を務め、各分野から6名のパネリストが登壇した。自治体代表として愛媛県上島町長の上村俊之氏、事業者として鳥取市でシェアサイクル実証事業を行っている株式会社トリベイ代表の縫谷吉彦氏、岩美町観光協会事務局長の田中司氏、行政として鳥取県サイクルツーリズム振興室室長の木原久美氏、メディアからサイクルスポーツ編集部の迫田賢一氏とバイシクルクラブ編集長の山口博久氏が参加。多様な立場からサイクルツーリズムの現状と展望について意見交換が行われた。

上村町長は、上島町がサイクルツーリズムに成功した要因として、しまなみ海道との地理的近接性、今治市との情報連携、そして上島・ゆめしま魅力発信アンバサダー(迫田氏)の存在を挙げた。観光資源の少なさを自転車という「ツール」で補い、信号がなく車が少ないという地域特性を活かした取り組みが功を奏していると説明。迫田氏は、走行環境の快適さと地域住民の温かい交流が町の魅力であると述べ、門田氏は「挨拶が観光をつくる」という海外事例を紹介し、地域文化としての自転車活用の可能性を示した。

山口氏は、国内のサイクリスト人口の少なさを指摘し、IP(キャラクターやアニメ)を活用したライト層への訴求を提案。鳥取県が「コナン」「鬼太郎」など豊富なコンテンツを有する点を強みとした。門田氏は、電動アシスト自転車の普及によって一般層の参加が容易になったことを紹介し、木原氏は初心者にも楽しめるコース造成が今後の課題であると述べた。田中氏は、岩美町ではアニメのロケ参考地巡りを目的とするライト層の利用が増えていると報告した。

縫谷氏は、シェアサイクル事業の住民利用が増えていると報告し、木原氏も地域定着への期待を示した。

上村町長は、上島町では住民へのルール教育から始め、車道走行への理解を深めた過程を紹介。門田氏は、自転車を通じて車道の意識が変化することで安全性が向上するとの見解を述べた。ディスカッションの半ばに登壇した国交省の土田氏は、観光客が自転車で走る光景が地域に定着することで、住民の理解と安全意識が高まる「好循環」が生まれると指摘し、「サイクルトレイン」「サイクルバス」を備えた鳥取県は全国でも参考になるのではないかと述べた。

議論の後半では、「鳥取うみなみロード」の活用方策が中心となった。門田氏は、玄関口を無理に設定せず、自然にアクセスしやすく魅力ある地点を起点とする重要性を指摘。山口氏は写真映えするモニュメントやスポットの設置など、SNSを意識した仕掛けづくりの必要性を提案。迫田氏はサイクリングに加えてSUPや釣りなど他アクティビティとの組み合わせが滞在促進につながると述べた。土田氏は、空港の更衣室・サイクルバス・自転車キャリア付きタクシーなど、鳥取県の受け入れ体制について言及。上村町長は、2027年に愛媛で開催予定の「Velo-city」を契機に、日本でも欧州のような自転車文化が定着していくとの展望を語った。

パネルディスカッションでは、サイクルツーリズムを地域文化・観光・交通政策の三位一体で進める必要性が共有された。特に「鳥取モデル」として、公共交通との連携やライト層を取り込む柔軟な発想が、今後の地域振興の鍵になることが確認された。

ディスカッションのコーディネータ 株式会社コイデル代表取締役 門田基志氏
上島町のサイクリング環境について語る上島町長 上村俊之氏
鳥取市でシェアサイクル事業を行う株式会社トリベイ代表取締役社長 縫谷吉彦氏
スポーツ利用だけでなく観光でのサイクリングの可能性に期待と話すバイシクルクラブ 山口博久氏
シェアサイクルの定着に期待していると話す鳥取県サイクルツーリズム室室長 木原久美氏
ライト層の自転車利用が増加していると話す岩美町観光協会事務局長 田中司氏
自転車とアクティビティを掛け合わせることで滞在促進が期待できると話すサイクルスポーツ 迫田賢一氏

トライアルライド・ミーティングを経て<鳥取県の受け止め>

ライド、ミーティングを経て田口氏は、県外参加者と共に行ったトライアルライドを通じ、五感で地域を感じ取る体験の価値を実感したと述べた。車では得られない匂いや空気感、細い路地や高台など、自転車ならではの視点から地域の魅力を再発見できた点を強調した。

また、Eバイクについては坂道や起伏の多い地形でも一定の負担で走行でき、周囲の景色をより深く楽しめる優れた手段であると高く評価し、特に初めて訪れる場所では、移動そのものが体験価値を高めると述べた。

広域連携の重要性にも触れ、道路やルートがつながることでコースの多様化や観光客の楽しみが広がり、鳥取県の観光資源を他地域のサイクルインフラと結ぶことで相乗効果が期待できると語った。

さらに、自転車を「自助・共助・公助」の中でどう位置づけるかを課題として挙げ、日常生活への自転車文化の浸透や、地域住民が自ら地域の魅力を理解し発信する重要性を強調した。特に、シェアサイクルのような「共助」の仕組みとSNS等による情報発信が今後の鍵になるとした。

最後に、漫画などのコンテンツが世代を超えて継承されている例を挙げ、自転車文化を次世代へどう伝えていくかが今後の大きなテーマであるとまとめた。