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活動レポート[ACTIVITY REPORT]

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廃線跡活用の自転車・歩行者専用道路を走った岡山トライアルライドと、新会長県の溢れる意欲|Setouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】報告

2026.02.13

令和7年11月7日(金)、岡山県岡山市で行われたSetouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】にて、伊原木隆太岡山県知事が新会長に就任した。この総会、ならびに岡山県和気町の「片鉄ロマン街道ルート」で開催されたトライアルライドの模様をレポートする。


Setouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】に先立って開催されたトライアルライドのスタート地点は、岡山県和気町の「わけまろパーク」。集まった45名のSetouchi Vélo協議会の関係者の中には、第3期会長県の湯﨑英彦広島県知事や第4期会長県となる伊原木隆太岡山県知事の姿も。

第4期会長県となる伊原木隆太岡山県知事(左)と第3期会長県の湯﨑英彦広島県知事(右)

今回のライドコースは2003年に開通した「片鉄ロマン街道ルート」を一部走るというもの。20年以上前に廃線跡を自転車・歩行者専用道路に転換した、全国でも珍しいルートだ。

トライアルライドを迎え入れる和気町の太田啓補町長は「線路跡のため高低差が少なく、子どもからお年寄りまで楽しんでもらえるコースです。清流・吉井川の風を心地よく受けながら走ってください」と挨拶。

和気町の太田啓補町長

例年通り、Setouchi Véloのトライアルライド参加者が乗るのはジャイアントのEバイク。株式会社コイデル代表でプロライダーの門田基志氏によるレクチャーで基本的な操作方法を学んだ後は、班ごとに別れての実走練習。サドルの適正な高さや、ブレーキを片方だけかけないように注意すること、またEバイクならではの電源スイッチの扱いなどをレクチャー。

トライアルライドの前にはEバイクの乗り方講習も

気候はこれ以上ないほどにカラっとした秋晴れ。暑いかなと思って、と伊原木知事はインナー姿でライドのスタートを切った。「片鉄ロマン街道ルート」は備前市の頭島から津山市までつながる全長76kmのルートだが、今回はルート上の旧片上鉄道の線路跡を整備した自転車・歩行者専用道路(34km)のうち10km地点の「わけまろパーク」から26km地点の備前福田駅までのおよそ16kmを走るルートが採用された。

スタート地点は和気町の「わけまろパーク」
廃線跡を利用した自転車・歩行者専用道路の「片鉄ロマン街道ルート」が今回のコース。

走り始めてすぐに、道が真っ直ぐなことに気づく。なるほど、確かに線路上を走っているみたいだ。ほとんど高低差を感じさせない走りやすい道だが、これはEバイクの推進力の恩恵もあるだろう。グイグイと進んでくれる自転車に任せてペダルを踏んでいると、あっという間に最初の休憩地点「天瀬駅跡」に到着した。

Eバイクでスムーズなライディングを楽しんでいるとあっという間に最初の休憩ポイントへ

保存された駅舎とプラットフォームは趣たっぷりで、どこかタイムスリップした気分になる。耳をすませば改札の切符を切る音が聞こえてくるような……。

天瀬駅跡で記念撮影

ここで参加者を待っていたのは、ピオーネのゼリー。岡山県産のピオーネがごろごろと入ったゼリーは美味の一言だが、走り始めて間もなくの休憩に、「消費カロリーより摂取カロリーの方が多くなっちゃうかも!」と伊原木知事が笑う。のどごしのよいゼリーはサイクリングにぴったりだった。

参加者に振る舞われたのは岡山の特産品でもあるピオーネのゼリー

再び走り出すと、ルートは樹木のトンネルに覆われた。木漏れ日が心地良い。そして時折吹く風に、太田町長の「吉井川の風を受けて」という言葉を思い出す。廃線跡の情緒や、クルマの侵入がなく走りやすいことがこのルートの特徴であることは間違いないが、風景としては道に並走する吉井川の佇まいが見事だ。そのゆったりとした流れは、「急いで走らなくていい」と言ってくれているようで、そんな意味でも走りやすいと感じた。

自転車・歩行者専用道路の快適さを実感。

気候がいいからか、道がいいからか、Eバイクがいいからか(おそらくその全てだろうけれど)、あっという間に次の休憩スポットに到着。今度は苦木駅の跡。駅舎の保存状態も良く、再びノスタルジーに浸る。ここでは桃ジュースときびだんごが参加者に振る舞われた。いずれも岡山といえば!の名物だ。岡山には色々と特産品が多いと改めて実感させられた。

2度目の休憩スポットも駅舎跡。苦木駅跡でも岡山らしいグルメがお出迎え。
岡山名物といえば、のきびだんご。

最後に吉井川を越えるのが、この日のハイライト。ずっと左手に見ていた川の雄大さが、自分の足でペダルを漕ぎ渡ってみるとよくわかる。恵まれた天候とグルメもあって、参加者たちは約16kmの行程をあっという間に走り切った。今日のライドはここまでだけれど、「片鉄ロマン街道ルート」はまだ続いているので、いつかまた走りたいと誰もが思ったはずだ。

最後まで笑顔でルートを走りきった伊原木隆太 岡山県知事

伊原木隆太 岡山県知事インタビュー

このトライアルライドの開催県岡山の長であり、第4期のSetouchi Vélo協議会会長を務める伊原木隆太岡山県知事に、この日のライド、そして今後の意気込みをうかがった。

―岡山でのトライアルライドを走ってみて、気分はいかがでしょうか?
この「片鉄ロマン街道ルート」はとても走りやすい道なんです。私はもう何度もこのルートを走っていますが、今日は一番良い季節にみなさんと一緒に走れてうれしいですね。岡山県では8つのサイクリング推奨ルートを設けているのですが、北部の蒜山のルートとともに、この「片鉄ロマン街道ルート」は私のお気に入りのひとつ。今でこそ廃線跡にサイクリングロードをつくる、というアイデアは珍しくないかもしれませんが、それを20年以上前に思いついたのだから素晴らしいですよね。

―知事と自転車の関わりを教えてください
広島の湯﨑知事が自転車好きで、以前、彼の勧めで中国地域の知事たちがロードバイクを買ったんですよ。バイクが高性能なので、私は自分の性能が上がったんじゃないかと思いました(笑)。それから自転車のイベントにも目が向くようになって、県内で開催されたヒルクライムレースにも出場したんです。後からスタートした中学生に抜かれたりしながら、ヘトヘトになってフィニッシュしましたが、そこで豚汁を振る舞ってもらったりして、自転車で走る楽しさを実感しましたね。

自転車についての話題で笑顔がこぼれる伊原木隆太 岡山県知事

―Setouchi Véloの会長県となりますが、その意気込みをお聞かせください。
よく言われることですが、自転車は健康にいい。クルマでは印象に残らない景色をみることができる。排気ガスを出さないので環境にいい。健康・観光・環境にいいというこの自転車で安全に走れる場所を少しずつ増やしていって、県民や観光客のみなさんにもっともっと自転車に乗って自然豊かな岡山県を楽しんでもらえるようにしたいですね。

―広域連携もSetouchi Véloの大きな特徴ですが、岡山県としてどんな連携を行っていきますか?
大阪も兵庫も、山口も瀬戸内海に面していますが、こと岡山県は瀬戸内海の中央にどっしりと面しています。同じように広島や香川、愛媛といった県も、「瀬戸内」という一つのエリアの中にあります。こうした我々の共通の内海である瀬戸内をみんなで綺麗にして、みんなで楽しめる地域にしていくために、近隣県と協力しながら素晴らしい瀬戸内を守り、生かしていきたいと思っています。

Setouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】

トライアルライドを終えた一行は、岡山市内へ移動。ホテルグランヴィア岡山にてSetouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】が開かれた。

Setouchi Vélo協議会 岡山会議【総会】の様子

第3期の会長を務めた湯﨑英彦広島県知事は冒頭の挨拶で、この1年の広島県下での活動に言及。各地でルート開拓や里山でのMTBの拠点化を見据えたトライアルライドの開催などを行ってきたことを報告。自身もMTBに乗る知事らしい、精力的なこの1年の活動がうかがわれた。

会長盾が岡山県の伊原木隆太知事に引き継がれた。

ハンドオーバーセレモニーで会長盾を岡山県の伊原木隆太知事に引き継ぐと、湯﨑知事は「各団体が連携して、瀬戸内地域、またその周辺地域のブランド価値向上や持続可能な地域振興の実現に向けた本協議会の取り組みが、より一層進むことを期待しています」と後任に向けてエールを送った。

「このたび湯﨑知事からこの会長職を引き継ぐこととなり、大変張り切っております」と恭しく決意表明を語るのは新たに会長となった伊原木知事。

会長県となった抱負を語る岡山県の伊原木隆太知事

「前会長を務められた湯﨑知事、また四国では中村愛媛県知事、この両知事による自転車の楽しさを広める活動、功績は素晴らしいものがあります。私自身も湯﨑知事にきっかけをいただき、自転車の良さを知りました。気持ちがいい、健康にいい。自転車に乗ると、地元の人が、自身の住む地域をいいところだと感じます。また観光客が自転車に乗ることで、その地をいいところだとも感じますね。歩くと時間がかかりすぎますし、クルマでは一瞬で過ぎ去ってしまう。自転車のペースが、幸せを感じるちょうどいいペースなのだと思います。

同時に我々が整備をきちんとしないといけません。道路の凸凹やクルマとの接触で怪我をするようなことがあると、せっかく健康のために自転車に乗っていることが台無しになります。道路管理者として、安心して自転車に乗れるルートの整備が大事だと実感しているところです。」

事務局を務める本州四国連絡高速道路(株)の後藤政郎社長からは第3期のSetouchi Vélo協議会の活動報告を行った。新たに鳥取県のサイクリングルートが1箇所追加され、全109ルートの総延長約8614kmに拡充したこと、3度のトライアルライドで150名を越える参加者を集めたこと、2023年の高松会議で実施したトライアルライドのルートの整備を行ったことなどが報告された。第3期注目のPR活動としては、先ごろまで開催されていた大阪・関西万博2025と絡めての情報発信も積極的に行った。また、この日のトライアルライドが行われた岡山県和気町や協議会当日に構成団体として新たに加盟した島根県を含む8団体が新規加入し、参加団体数は64まで増加している。

第4期に向けてはさらなる参加団体の拡充とInstagramによるSNSでの発信強化が目標に掲げられた。

情熱的な新会長が牽引する、Setouchi Vélo協議会の第4期に期待が高まる。

国土交通省道路局参事官・自転車活用推進本部事務局次長の土田宏道氏による記念講演「次期(第3次)自転車活用推進計画とサイクルツーリズムについて」

総会後には記念講演が開かれた。国土交通省道路局参事官・自転車活用推進本部事務局次長の土田宏道氏による「次期(第3次)自転車活用推進計画とサイクルツーリズムについて」では、今まさに5年に1度の改定作業中にある自転車活用推進計画の最新の状況が伝えられた。

自転車の走行位置を示した矢羽根型路面表示が整備された道路が増えたが、それだけで終わってはいけないという指摘や、来春から自転車にも青切符が適用されることを受けての、さらなる啓蒙の必要性など、自身がサイクリストである氏ならではの乗る人の目線に合わせた細やかな視点がうかがわれた。

サイクルツーリズムに関しても現状は明確に切り分けられていない「サイクリングを目的とするもの」と「自転車を観光地における移動手段とするもの」を意識的に別立てにして施策を打っていく予定だという。

また2027年に愛媛県がホストする自転車の国際会議「Velo-city」についての概要も伝えられた。

株式会社コイデルの西山靖晃氏による記念講演「Velo-cityと先進地欧州の自転車走行環境」

続く株式会社コイデルの西山靖晃氏の「Velo-cityと先進地欧州の自転車走行環境」では、欧州各地でレースを転戦してきた氏が見た自転車フレンドリーな各都市の姿が、撮影された映像とともに報告された。

Velo-cityの最終選考ではアテンド役を務めたという西山氏だが、Setouchi Vélo協議会の広域連携を志すビジョンには共感を得たという手応えがあり、招致の後押しになったと実感しているという。

同氏は現地でVelo-cityに出席したが、「成功事例を発表する場だけではなく、未解決の問題を共有し、それを解決に向けて話し合う場所」という印象を持ったという。これは2027年の愛媛開催における日本側の発表のあり方のヒントにもなりそうだ。

同氏は「この国際会議は、瀬戸内地域にとっての財産になる」という。瀬戸内の課題が世界の自転車議論に接続していくという意味での発言だったが、そうなればより一層、Setouchi Vélo協議会がこれまでに積み上げてきた実績と課題が共に意味を持つことになる。Setouchi Vélo協議会は2027年に向けて、ますますの活動の充実が求められることになりそうだ。