Setouchi Vélo

イベントレポート[EVENT REPORT]

EVENT REPORT
#イベントレポート#愛媛県

Setouchi Vélo協議会の第1回市町ミーティング、今治で開催

2023.05.26

2022年10月、「瀬戸内エリアをサイクリングの先進エリアへ」発展させていくために発足したSetouchi Vélo協議会。この活動に賛同する市町を舞台に、エリアの特性や魅力の確認、サイクリング活動の把握、今後発展させていくためのポテンシャルを確かめ合うミーティングイベントを定期的に開催することとしており、その記念すべき第1回目が、しまなみ海道でも有名な「今治市」で4月26日(水)開催された。今回はその模様をレポート形式でお伝えする。

絶景の来島海峡大橋の登頂体験とトライアルライドの実施

今治市といえば、タオル、縫製、造船などを中心に栄え、港を中心に発展を遂げてきた海事都市だ。芸予諸島はその昔様々な海上活動を展開した海賊、村上海賊の舞台でもあり、その島々で形成される風光明媚な景観は訪れる者の言葉を奪うほど絶景である。

それならば と今治のトライアルライドは、約4kmの来島海峡に架かる世界初の3連吊橋「来島海峡大橋」のEバイクライドで橋上からの多島美を味わい、登頂体験で橋の頂から瀬戸内・今治を俯瞰で見下ろすというスペシャルな内容。コースは今治港からEバイクを積載してフェリーで下田水港へ。そこからライドで来島海峡大橋を渡り、途中塔頂体験を経て今治港へという約10kmのルート。

今治港から乗り込んだフェリーのデッキには、自転車のサドルを引っかけるバーがずらり。自転車同士が当たらないよう専用の緩衝ボードで自転車を挟み込み、船の揺れにも対応。手慣れた手つきとともに短時間で自転車積載をおこなう船上スタッフに感心した。

下田水港からは、Eバイクで来島海峡大橋へ。橋へつながるループ状の自転車道は傾斜があり少しキツい区間でもあるが、Eバイクなので負担を感じることもなく電動アシストでスイスイと気持ちよく上がっていきEバイクの有用性を実感した。 橋の上を自転車で渡ることができるという貴重な体験は、もはや観光の目玉として国内外の観光客の定番になりつつあるが、何度訪れてもこの橋上からの景色は最高。海風を感じながら自然と笑顔になる参加者一同であった。

途中、馬島地点にあるエレベーターで来島海峡大橋の主塔頂上まで。通常なら見ることができない高さ180mの塔頂からの景色は圧巻。高所が苦手な方でなければ、事前予約制だが中学生以上なら誰でも塔頂体験は可能だ。この日の天気は最高。気分も自然に上がる。

登頂体験後、市内を自走して今治港まで。船上と登頂のダブル体験をサイクリングで楽しむことができた。

市町会議の開催

Setouchi Vélo協議会会長 中村時広 愛媛県知事の主催者挨拶

「サイクリストの聖地“しまなみ”だけでなく、ここ瀬戸内エリア全体がとてつもないポテンシャルをもっているということで、サイクリングの振興を通じて、情報発信をし、結果的に地域の活性化に結びつけようと発足した協議会である。今日はそれぞれの取組みや講演を通じてさらなる磨きこみ、そして関係者の理解度向上とブラッシュアップというところにもっていければと考えている。サイクリング振興策は単に、ハードの整備だけではだめで、ルールやマナー、地域住民の理解など多方面でやっていく必要がある。日本で自転車といえば“瀬戸内エリアだ” と言われるくらい、長い目で見て圧倒的な存在になれるよう、いろいろな取り組みをすすめていきたいとおもう。」と語った。

四国地方整備局局長 荒瀬美和氏 挨拶

「トライアルライド、非常にいい天気のなかサイクリストの仲間とともにEバイクでしまなみ海道の魅力とサイクリングの素晴らしさを感じながら気持ちよく走ることができた。環境・健康・街づくりなど様々な分野において、五感で地域の魅力を感じコミュニケーションを深めることのできるサイクリングは地域活性化の切り札となっている。 協議会では、行政間を超えたサイクリングルートのネットワーク化、日本屈指のサイクリング推進エリアとして、「歩行者・自転車・自動車」が一緒になって安全に共有できるよう安全性の高い自転車空間の構築、情報発信に取り組んでいる。引き続き関係機関と一緒に取り組みを進めていきたいと考えている。」と語った。

本四高速 後藤政郎社長による活動紹介

「本協議会の活動を軌道に乗せるために、構成団体の連携を深めてしっかり実行に移していきたい。現在構成する団体が有するサイクリングコースに加え、四国一周、ゆめしま海道を追記したマップを4月に発刊。今後さらに行政間をまたぐコースを設定し更新していく予定。またWEBサイトもリニューアルし、ルートの紹介とルートデータを取得できるようにした。『推進エリア化』については3月に兵庫・徳島・香川にまたがるトライアルライドを実施。市町間で理解を深めた。 そして今回第一回となる『市町ミーティング』は地域の理解度の向上、サイクリストの受け入れ意識の更なる醸成のため、ここしまなみ海道を有するサイクリストの聖地でもある今治で開催するようにした。今後、更に多くの賛同者を募って一歩一歩あゆんでいき、瀬戸内を世界のサイクリスト憧れの地域にしていきたい。」と語った。

国土交通省 自転車活用推進本部事務局次長 道路局参事官の金籠(かねこ)史彦氏による「自転車活用に向けた施策展開について」の基調講演

金籠氏の自己紹介から始まり、自転車活用推進施策について国が作ったマスタープランの概要説明、国内および国外のサイクルツーリズムに関する事例紹介、自転車と公共交通機関の連携、ヘルメット着用の努力義務化について講話された。

マスタープランの目標達成のためのキーワードは「自転車でつながる!」「町とひとがつながる! 」「そして元気になる、幸せになる!」ということ、またその目標達成のためにはハードウェア(インフラ・自転車)、ソフトウェア(制度・サービス)、オルグウェア(連携・コミュニケーション)の3つの要素が大事であると話をくくった。

プロサイクリスト門田 基志氏による有識者講演

今治が地元でもあるMTBプロライダーの門田 基志さんがヨーロッパ遠征や台湾一周活動などの映像とともに海外事例を紹介しながら、ここ瀬戸内エリアがサイクリングの先進エリアになっていくためのヒントを「Setouchi Véloの可能性」とともに語った。

ヨーロッパでは、国境を越えてもサインやルートの環境が変わらないことを、実際ご自身が走る映像を見せながら説明。また自転車と自動車が共生するシェアザロードの環境と精神がいかに根付いているかハードとソフトの両面で語った。サイクリングは、200キロ走るようなサイクリストもいれば、自転車にカートを付けて子供と一緒に家族で楽しんだり、山道を高齢者がEバイクで楽しんだりと様々なのでそういった視点で活動をしてくことが大切。「どの国のどの街に行っても、そこに住む人たちが「自分の街はここが一番だ」と自慢しているように、ここ瀬戸内エリアも住む人が自信をもって、このエリアが世界で一番いいところ、また外からも瀬戸内へ行ってみたいと言ってくれるように目指しましょう!」と語った。

愛媛県 観光スポーツ文化部 自転車新文化推進課 藤原康芳氏による
「愛媛県の安全・マナー向上などの施策について」取組み発表

自転車が文化として根付くために重要なことは、「自転車の安全利用やマナーの向上」ははずせないテーマ。そもそも自転車新文化の考え方は、自転車が移動手段だけでなく自転車を楽しむことで、健康や生きがい、友情をもたらしてくれるという考えがベースにある。これには、台湾自転車メーカーのジャイアント様との出会いと関わりがあった。愛媛県が進める自転車新文化とは、「健康・生きがい・友情づくり」と、「交流人口の拡大による地域の活性化」が大きな目標になっている。この目標達成のためのひとつに「シェアザロードの精神に基づく安全利用」ということを大切にしている。歩行者、自転車、自動車がお互いの立場を思いやり、安全快適に道路を共有する取り組みを「1.5M運動」として進めてきている。現在、約200の運輸事業者様やタクシー事業者様、営業車をもつような事業所様に協力を仰ぎ、1.5M運動を示すステッカーを車両に貼ってもらって啓発に努めている。

また、マナー啓発では、歩行者と自転車がすれ違うときの挨拶運動を島しょ部を中心に進めていっている。県で全国に先駆けておこなったヘルメット着用義務化も安全策のひとつ。

こういった安全安心活動は、継続して取り組んでこそ定着していくので、今後も引き続き推進していきたい。また「瀬戸内地域全体でもSetouchi Vélo協議会を通じておなじような活動が広がれば、自転車で自由に安全に楽しむことの出来る、世界に誇れるサイクリングエリアになるとおもう。」と語った。