Setouchi Vélo

イベントレポート[EVENT REPORT]

EVENT REPORT
#イベントレポート#兵庫県

Setouchi Vélo協議会の第2回市町ミーティング、南あわじ市で開催

2023.06.22

2022年10月、「瀬戸内エリアをサイクリングの先進エリアへ」発展させていくために発足したSetouchi Vélo協議会。この活動に賛同する市町を舞台に、エリアの特性や魅力の確認、サイクリング活動の把握、今後発展させていくためのポテンシャルを確かめ合う第2回目のミーティングイベント「市町ミーティング」が5月22日(月)開催された。開催地は兵庫県淡路島の南あわじ市。今回はその模様をレポート形式でお伝えする。

うずしおinうずまちテラスと、うずの丘 大鳴門橋記念館をめぐるEバイクトライアルライド

今回2回目となる市町ミーティング。まずは開催地である淡路島を堪能すべくトライアルライドを実施。スタート前にガイドからEバイクの安全走行のための講習を受ける協議会メンバーたち。老若男女、体力差を感じることなく気持ちよくサイクリングを楽しむことの出来るEバイクに、構成団体である各自治体関係者が実際に乗ることでその魅力を体感することもトライアルライドの目的の一つだ。

会場であるホテル&リゾーツ南淡路をスタート地点に、道の駅うずしおinうずまちテラス、うずの丘 大鳴門橋記念館を走るコースは、サイクリングコース「あわいち」でもアップダウンが続く難所といわれるエリア。そんな不安の募るコースをEバイクは、頼もしいアシストで参加者たちの背中を押し上げ、順調なペースで走る気持ちよさに参加者も笑みがこぼれた。島外周道路のうずしおラインは、海を見下ろすことの出来る坂が続くことで標高が上がるほどその眺望は素晴らしい。

いい汗をかきながら道の駅うずしおinうずまちテラスに到着。 第一の休憩ポイントの「道の駅うずしおinうずまちテラス」は鳴門海峡を一望することのできるビューポイント。広場に用意されている淡路島の名産である玉ねぎカツラを被ってモニュメントとともに記念撮影。なにやら幼少にもどった感じで参加者同士の距離もぐっと縮まった。

順調なライドで無事スタート地点に戻ってきた参加者たちは、アップダウンの激しい坂を走り切った達成感だろう、息が少しばかりあがりながらも慢心の笑みでゴールした。

市町会議の開催

南あわじ市守本憲弘市長による挨拶

「トライアルライドでは、うずまちテラスからの良い景観を楽しんでもらったと思う。今年の9月には4年ぶりにロングライド「アワイチ」をやろうと思っている。Eバイクの味をしめてしまった私も参加してみようと思っているところ。

瀬戸内エリアのブランド向上、サイクリストの意識向上によって、ここ瀬戸内が世界に誇るサイクリングエリアになるため、さらなるコミットメントを強化していきたいと考えている。

南あわじ市は過去より鳴門市と東かがわ市と連携しており、また現在は徳島県と兵庫県で大鳴門橋の下の自転車道の整備を進めている。令和9年には大鳴門橋を自転車で通行できるようになるので、淡路島から四国へ自転車で走って渡れるようになる。そうなれば今度はしまなみ海道とつながり、自転車で本州へ渡り、瀬戸内を走ると”セトイチ”が実現できる。遠方からまた海外からも呼び込みが可能になりこの瀬戸内がサイクリストの目玉となるのではないかと思っている。」と語った。

本四高速 後藤政郎社長による挨拶

「先ほどの12キロのトライアルライドで足パンパン、がくがくしている。

昨年のしまなみ海道70㎞とほか今年のしまなみ海道70㎞に続き今回で3回目。心地よい疲労感でますます自転車が好きになっている。昨年発足したSetouchi Vélo協議会では、瀬戸内地域及びその周辺地域を、環境に配慮し安全で快適な、世界にも認められる「サイクリングの推進エリア」にするべく、瀬戸内地域のブランド価値の向上を図り、瀬戸内地域やその周辺地域の持続的な地域振興を実現することを目標に、各地・各機関が連携し、さまざまな活動を始めているところ。

4月26日には、サイクリストの聖地しまなみ海道の今治で初めてのSetouchi Vélo市町ミーティングを開催した。本日はその第2回目の市町ミーティングとなる。10月の高松会議に向けて今後もさまざまに各団体と連携していきたいとおもっているので、ご協力お願いします。」と語った。

徳島大学山中英生研究部長による基調講演

徳島大学社会産業理工学研究部長の山中英生氏による基調講演では、サンフランシスコを例に挙げて、レンタルバイクでゴールデンゲートブリッジと船を使って街をサイクリングで観光するルートの例が発表された。そこからSetouchi Véloの可能性として、アワイチのような達成感だけではなく、シェアサイクルを使った観光の移動手段としての自転車活用や、ガイドツアーといった多様な自転車活用が、ひいては経済効果をもたらすことが語られた。

「サンフランシスコでの自転車の楽しみ方として、自転車を借りて街からゴールデンブリッジで向こう側にわたって、向こう側からはフェリーを使って戻ってくる、そのような半日ツアー(約5000円から6000円)をしている。サンフランシスコのビーチにはレンタサイクルショップが数十件ある。街が自転車ネットワークをかなりやっていて街中に自転車のイメージが溢れている。マップがなくてもちゃんと走れるようになっている。ゴールデンブリッジまで渡って走っているとやはり疲れるので、船に乗って帰ってこられるのはとても魅力的な過ごし方。

このように公共的な空間と民間の産業がうまく連携をしている姿がサンフランシスコにはある。

また、ヨーロッパ全体で7560億円の経済効果があるといわれているユーロベロだが、その大半は宿泊と食事。ユーロベロでは、ひとつの長距離コースを全部走る人は多くなく、ルート上にある宿泊施設から、一日あるいは半日かけて自転車で遊ぶ。そしてまた車で次の場所まで行く。そのような遊び方をされている人たちが多くみかける。いわゆる、「半日自転車で遊んで、それ以外の楽しみを半日プラスαして楽しむ一日を繋いでいく仕組み」になっている。

ガイドツアーについては、全国でさまざまな取り組みが始まっている。ガイドツアーはそれなりの単価が取れないと成り立たない。その地域でしか見られないもの、味わえないもの、またその地域でないと体験できないことなどをコンテンツにして繋げていくような、単価を上げる仕掛けを開発していくことが必要。様々な人たちが関わってコミュニティを広げ、繋ぐ場(オルグウエア)によって新たなコンテンツを開発することで、小さなビジネスから大きく生まれ変わっていく。サイクリングも大きな産業となっていく可能性がある。 」と語った。

Setouchi Vélo協議会本四高速森常務による発表

「ユーロベロを参考にするとヨーロッパには、総距離9万キロという壮大なのべ16のコースが設定されている。ここ瀬戸内は、面積で比較すると非常に小さい規模になるけれども、サイクリングの魅力が集積してる地域だと感じている。サイクリングの先進エリアに推進していく我々協議会の構成団体は、当初の県や経済団体から、今は市町にも参加していただいている。今後はバスや鉄道をはじめとする運輸運送業界、大学、郵便局、コンビニ、民間のメーカー、銀行など多様な団体の参画によって多様な価値を生み出していければ発展していけるものと考えている。

昨年の会議で発表された愛媛宣言では主に3つの活動としている。(1)サイクリングルートのネットワーク化 (2)サイクリングの推進エリア化 (3)国内外への情報発信。

その中でも特に進めていきたいのがEバイクの普及。私も先般アワイチルートをEバイクで走って完走した。初心者で中年の自分でもサイクリストと呼ばれる方たちと同じサイクリングが、このEバイクでやれたということにポテンシャルがある。Eバイクの普及によって万人が楽しむことができるサイクリングというのが始まるのではないかと実感している。ここ瀬戸内ではそのような潮流をいち早く進めていければと思う。」と語った。

南あわじ市万博・観光戦略統括官吉村文章氏による発表

「トライアルライドで皆さんがEバイクで気持ちよく走っていただいたコースは、アワイチのなかでも難所といわれる4か所のうちの一つでした。淡路島を1周しているサイクリスト50人にアンケートをとると8割がリピーター、96%の人が自分の自転車で、9割の人がロードバイクという上級サイクリストのコースと思われている。今後Eバイクの普及によって誰もが走れるコースになるともっと多くの方に来ていただけるのではないかと今日皆様が走っているのを見て実感した。

私の方から南あわじ市のサイクルツーリズムの取り組みについて発表したい。始まりの島と呼ばれる淡路島では、歴史文化や人形浄瑠璃、明石海峡公園という花いっぱいの施設、進化し続ける西海岸、明石海峡大橋など、豊富な観光資源に恵まれている。また、御食国と呼ばれる淡路島では、1年を通して島グルメを楽しむことができる。そんな淡路島でサイクリングが人気を博したのは、明石海峡大橋の開通後。

2019年にナショナルサイクリングロードの指定を目指した協議会を立ち上げ、淡路推進プログラムを策定。四つの政策のもと、50のプログラムを進めている。大きくは走行環境の整備、受け入れ環境の整備、そして情報発信。こういった淡路島全体の取り組みに加えて、南あわじ市では鳴門海峡を越え、四国と連携した取り組みを行っている。徳島県の鳴門市、香川県の東かがわ市、そして兵庫県の南あわじ市がASAという協議会を作っている。三つの県市をまたぐトライアングルコースを設けて、鳴門海峡を越えたサイクリングを推進しており、サイクルツーリズムの取り組みは広がりを見せているところ。2025年の関西万博に向けて、更に観光のPRも強化していく。」と語った。

パネルディスカッション「セトウチヴェロの未来を考える」

パネルディスカッションでは、 コーディネーターとしてプロサイクリストの門田基志氏。パネリストは、南あわじ市守本市長、徳島大学山中研究部長、サイクルスポーツ中島編集長、バイシクルクラブ山口編集長、森事務局代表が登壇。

<門田>

Setouchi Véloのタグラインが、「一つの瀬戸内それぞれのストーリー」ですが、一つの瀬戸内になってこれからサイクリング推進エリア瀬戸内に持っていくためにどういうことが必要なのかを皆さんで議論できたらと思う。

<中島>

今日は2点話したい。アワイチと観光を一緒にしてしまうとわかりにくくなってしまうという話。アワイチは言ってみれば、サイクリストにとってはチャレンジ。マラソン大会に出るようなかなりハードな行動をしに来る人がやっている。なので、車で観光に来たときには、パスタが有名な店やイザナギ神宮に行ったりワカメを買ったりとかするのに、アワイチだと途中でパン食べるっていう気分には正直にならない。1周ルートだけを整備してしまうと、観光とちょっとずれてしまうというか、観光したい人は、1周ルートのほかに意外と遊びたいものを求めていたりする。

2点目は教育。これは本当に大切だと思っている。

大事になるのは何かというと、学生時代に、自転車っていうのはすごく便利で楽しくて、そして環境問題の対策にも有用な乗り物なんだ、ということを教えてあげる。そして、車も自転車も歩行者も道路を共有する仲間なんだ、ということを教育として教え込むことが今後の瀬戸内エリアひいては日本全国に繋がっていくことが大切と思っています。

<門田>

車と自転車の関係ってすごく重要だと思う。山口編集長がそういう話ができるんじゃないかなと思うんですが、一言お願いします。

<山口>

日本も自転車走行環境はだいぶ良くなっている。

メディアとして掲げているシェアザロードって言葉がある。自転車乗りとドライバーと歩行者、別々のものだと思ってしまうが実は、1人の人間がドライバーのときもあればサイクリストのときもあり歩行者のときもある。それぞれタイミングによって立場は変わってくるものなので、シェアザロードっていうのはそういった立場が違っても互いに相手を思いやって走れるようにする、そういった走行空間の雰囲気を地元で作っていただければと思ってます。

<門田>

はい、ありがとうございます。物理的に道路を広げるとかというよりはシェアして使っていくことによって狭い道でも自転車が走りやすい環境ができるんじゃないかなっていうところと、そういったムードを教育で以って広げていけるのではないかなというようなことだと思います。開催地である南淡路・淡路島の持つ可能性ってすごく高いと思うんですが、一方で責任も重いと思います。南淡路はエリアの玄関口にもなってくると思うんですが市長一言よろしくお願いします。

<守本市長>

淡路島自身は高齢化が結構進んでいますが、実はその観光が特にコロナの影響を受けず落ち込まなかったという非常に優位な位置にあります。しかし観光の受け入れにも1市町だと限界がある。淡路島が広域で繋がって、観光客がのんびり瀬戸内海回ろうじゃないかみたいな感じになるともっといろんな形で楽しんでいただけるようになると思うし、いろんなおもてなしができる。

<門田>

高齢化対策としても、脱炭素化社会としても、観光としてもEバイクの活用というのはすごくいいんじゃないかなと思うんですが森さんいかがでしょう。

<森>

Eバイクに初めて乗ったのが約2年前。自転車に全く縁がなかった妻と一緒に一泊2日で100キロ以上走りました。Eバイクは本当に可能性を広げてくれる。サイクリストのためのサイクリングっていうイメージを変えていく、あるいは仕掛ける我々の側も意識して考えていく必要がある。サイクリングを通じて新たなマーケット市場を作り出す。市場を作ったり文化を作っていくにはいろんな人間がアイディアを出していろんな立場からいろんなことを言って、トライアンドエラーを繰り返すのは非常に大事じゃないかなと思う。

<門田>

この瀬戸内にサイクリングに来る人、来たからにはサイクリングに挑戦しようと思う人や地域の人が一緒に自転車を楽しもうというエリアになっていけるとすごくいいところになると思う。

瀬戸内エリアにEバイクの活用が多くなればなるほど瀬戸内に観光の側面で人が増えてくるとおもう。また高齢の方が自転車を楽しむのであれば、Eバイクというものを使って、楽しみが増えてくることによって健康寿命増進につながる。世界から見てこの瀬戸内がサイクリングで楽しいエリアになってくれたらいいんじゃないかなと思います。

教育も含め、高齢者の自転車活用、都市交通、旅行者サイクルツーリズム全部含めて自転車を活用する人みんなが幸せになるようなエリアが瀬戸内エリアになってくれたらいいんじゃないのかなと思う。