- TRIALRIDE
- #高知県
四国4県を巡るトライアルライド [Day2]〜サイクリング環境拡充を目指して〜
2024.04.11
2024年4月10日(水)〜12日(金)の3日間、四国4県をめぐるトライアルライドが行われた。
このライドに参加したのは、Setouchi Vélo協議会とその加盟団体員。これまでに行われた総会や市町村ミーティングにおいて、世界や日本の各地の取り組みなどの“知識”を得てきたが、今回はライドを行うことで“体験”すること、またライド後にディスカッションすることが目的である。各エリアの可能性や課題を確認し、それぞれの今後の取り組みに活かしていこうという試みである。
今回はその2日目の様子をお送りする。
Day1
- Ride1|愛媛・松野町『道の駅虹の森公園まつの』〜高知・四万十町『道の駅四万十とおわ』(走行距離 24km)↗
- Ride2|高知・いの町『紙の博物館』〜高知・いの町『水辺の駅あいの里』(走行距離 14km)↗
Day2
Day3
Day2 Ride1
2日目は坂本龍馬像が見守る中、高知・夜須町『道の駅やす』をスタートする。コースのほとんどは海岸線に配備された自転車道である。高知県東部の香南市から安芸市までの約15kmを結ぶ自転車・歩行者専用道路「高知安芸自転車道」は、土佐電気鉄道・安芸線の廃線跡の一部を整備してできたサイクリングロードで、今回は高知・安芸市『道の駅大山』をフィニッシュする21.5kmの道程である。
車の通行がない自転車道なので、走行中にストレスを感じることは少なく、安芸線が運行していたときの隧道がほぼそのままに残っているのもよい。また途中ですれ違う“お遍路さん”たちの姿に、サイクリングが旅であるということを教えられる。赤野自転車道休憩所にはトイレやベンチがあり、初心者でもサイクリングを安心して楽しむことができる環境が充実している。
ライドの当日は自転車道のいくつかの地点で工事が行われていた。何度か別の道への迂回が必要になったのだが、進む道を示す看板などのサインがもう少し細かくあるとよかったように感じた。自転車道を終えて安芸市街を抜けるとフィニッシュ地点の『道の駅大山』だ。切り立った岩がならぶ海岸線の景色を楽しみたいならば、数km先にある大山岬まで足を伸ばしてもいい。
オールディスカッション[Day2 Ride1]
走行したコースについて
- 「地域の人やお遍路さんとの交流ができるスポットがあると良い。地域の人が自転車に慣れているので、挨拶を交わすこともあり、その点を活かして交流を深めたい」
- 「廃線後のサイクリングロードが気持ちよく走れたので良かった」
- 「お遍路さんとの関係性を活かして、面白い仕掛けができる可能性があると感じた」
- 「Véloスポットは、今、『休憩地点』という位置づけになっているが、今後、絶景やグルメなどの『おすすめの場所』というふうにしていってもいいかもしれない」
Day2 Ride2
今回のトライアルライドのなかで最長距離を走る2日目のRide2。高知・室戸市『室戸岬』〜徳島・海陽町『道の駅宍喰温泉』までの41kmのコースである。室戸岬の荒々しい岩礁帯を右手に見ながら、国道55号線を北上していく。気温は低くないものの、吹き付ける風の強さは参加者たちを疲労させていく。
雄大な海景色ははじめの頃は楽しむことができるのだが、その雄大さゆえ参加者に「あまり進んでいないように感じる。長かった」という感想を抱かせた。自転車で移動するサイクルツーリズムは車での観光に比べ、より線であると感じる。車を利用した観光であれば、観光地A、Bというふうに点を決めてしまえば、その道中、移動距離が長くなっても問題はない。
しかし、自転車の場合は移動に時間がかかることから、観光として楽しむためには、その点と点の距離が自動車の場合より近い必要がある。自転車の速度で見えるもの、自転車だから止まって楽しむことができるもの、または休みリフレッシュすることができる場所、そういったものが必要になるだろう。自転車だから気付ける、自転車だから行けるそういう場所があると嬉しい。
雄大な海岸線の先には、いくつかのビーチが現れる。人家が並ぶその佇まいは懐かしい昭和の景色のように思えてどこか安堵感を覚える。徳島県との県境をトンネルで越えた参加者たちは眼下に漁港を眺めて、道の駅宍喰温泉へとフィニッシュする。初めて長距離を走った参加者は言った「大変だったけど、やりきった満足感が心地いい」。それを聞いてサイクルツーリズムはやはり線だと思った。それは、先に述べた観光地などのスポットが近いほうがいいということだけではない。通して走ることで体感として得られる感動もあるのだ。
オールディスカッション[Day2 Ride2]
走行したコースについて
- 「平坦な道のため脚力に関係なく走れるが、補給ポイントが少ないことを考えると、初心者には少し難しいルートだなという印象」
- 「アップダウンが多く、トイレや休憩ポイントが少ないのが気になった。しかし、40km走り切ったという達成感は感じられるルートである」
- 「四国一周の際に走ったことがあるが、逆回りすると景色が変わって面白いと思うので、また挑戦してみたい」
- 「アップダウンが多いため、Eバイクが役立った」
- 「トンネルが県境になっているところでは、手前に県境を示す看板があったため、県をまたぐ感覚を味わえてよかった」
- 「個人の走力の差や天候の良し悪しで印象がかなり変わるコースだと思う」
- 「鉄道が走ってないエリアのため、タクシーなどを活用したレスキューサービスがあるといいと思った」
2日目のライドを終えて
自転車で走りやすいサイクリングロードと長距離の海岸線の道、どちらも自転車にとって魅力的な道だ。今日のライドを振り返る参加者たちの声から考えると、自転車に乗る人たちが最初に求めるのは『安心して走れる環境』だ。それは車で旅に出かけるときと大きく変わらない。どこにどんな観光地があるのか? 食事はどこでとれるのか? どこにいい景色があって、トイレはどこにあるのか?
車での旅であれば当たり前のように整備されている環境が、自転車にとってはそうではないようだ。サイクリングロードに設置されるポールや、路面の状況、大型車両の通行など、観光地やトイレのこと以外にもさまざまな課題がある。サイクリング環境の整備は自動車でのそれよりも繊細なのである。とはいえ実際に走ることで課題が明確になれば、あとは方法を見つけるだけなのではないだろうか。
自転車での移動距離は車よりも短い。訪れるスポットの点の密度が車より高いと書いたが、それはいままでより多くの、または新しいエリアに人々が訪れるようになることだとも言える。自転車の走行環境が整備されることで、新たなコミュニケーションが広がり、それぞれのエリアが豊かになっていくのではないだろうか。オールディスカッションでの参加者たちの声はそう言っているようだった。